夜の華 鋼の盾 第1幕 第三場

夜の華 せつなに散りゆくものとして。
 鋼の盾 守るものを守るために。
 いつか貴方は 何処かへ向かうの?
そして私は 流れていくの?

そして 彼らは 今日も どこかで。


第1幕 第三場 ゲオルグエリーゼ ホールの駐車場


 人気のない、暗く静かな駐車場。車がいくつも並んでいる。3人の男、そして、ゲオルグエリーゼ


 男3人が一台の車に乗り込もうとしていた。燕尾服の男が先に後部座席に乗ったときだ。
「あの…すみません」
 一人のドレスを着た女が尋ねてきた。男達は驚いた。ここに来る間中、足音は自分たちのものしか聞こえていなかったからだ。何事かと思っていると、彼女は車の側に立っている男の一人に駆け寄り、
「貴方が《烏麦》?」
 その男が驚き、懐に手を入れるより早く。
彼女は手に隠し持っていた刃で男の首を掻き切った。
 噴水のように舞い上がる血飛沫。赤く染まった刃。哂う女。
 もう一人の男と燕尾服の男が反撃する事は出来なかった。彼らが状況を把握し、血相を変えるまでのほんの数秒に、彼らは撃たれていた。誰かの放った銃によるものだ。
 2発、3発。彼らはそれぞれ腕、肩を負傷した。その間に女はどこかの車の陰に隠れてしまっていた。銃を放つ音は尚も続き。
 6発、7発。結局彼らは何処から銃が放たれているのか理解することなく倒れ、駐車場は静まり返った。
そこには、銃を携えた大柄な、髭面の男と、深紅のドレスを纏った女が立っていた。
血に染まり、そのドレスの色は、さらに紅く、紅く。
月の光に映えた。


後日談をしておこう。休暇から帰った彼らは後日規定の俸給を受け取った。彼らの休日の日程は5日ほど潰れたが、それに対する措置は(ゲオルグが強く望んでいた――実際に彼はアウグストを通して2回ほどかけあった――にも関わらず)特別には施されなかった。